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どろのなかのはな【登録タグ と オカメP 初音ミク 曲】 作詞:オカメP 作曲:オカメP 編曲:オカメP 唄:初音ミク 曲紹介 それは自己観察 オカメP の78作目。 イラストは Ruuya氏 が手掛ける。 歌詞 見つめた答えだけが ただひたすら僕を考えさせる 触れていた確かに君に 溢れ出すよ 泣いたような声で 壊れゆく 時の中で夢見の中で 時は無情に夢は忘れてゆく 遠い日が 壊れゆく 滲んでる 遠い日が 泥の中の優しさ そこに白い花が咲いた 音もなくて静かに・・・静かに・・・ 時が流れ枯れても 零れ落ちた愛おしさは 取り残されてもいつまでも咲いてた 消せないよ 遠い日が 泥に咲く 優しさは 取り残されて 歪んでる・・・ コメント 好きな曲だ -- 名無しさん (2015-03-15 17 04 50) 名前 コメント
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第21話 2002年 6月23日 初O.A 原題 A Worm in the Bud 邦題 セトウェル森の魔(直訳:つぼみの中の虫) 舞台 セトウェル森 キーワード:犬
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アーサー王伝説 石の中の剣(The Sword in the Stone) 岩に突き刺さり、誰も抜くことが出来なかった剣をアーサー王はまだ若い頃に引き抜いたと言われている。 その剣には、引き抜いたものはブリテンの王になるという伝承があったという。
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檻の中の遊戯 (四番目の記憶) 薔薇を想わせる緋色の口紅(ローズレッド色のルージュ) 唇には嘘吐きな約束を 昇り詰めて崩れ堕ちた その夜に花束を… 寂れた洋館 追い詰めた壁際 美しき獲物 軋む床 浮き上がる身体 月明かり差し込む窓辺… 細い頸に絡みついた 浅黒い指先が 食い込んでも離さないで 最期まで抱いていた… 仄蒼い庭 錆付いたスコップ 花を敷き詰めた棺 突然の閃光 歪んだ銃声 眩い環状の終端… あの悲鳴は(歌声が)葡萄酒(ワイン)のように 罪は月夜より甘く 堕ちてゆく詩は狂気(ルナ)を孕んで 闇を照らし躍らせる… 煌く瞬間(とき)の宝石(いし)を 集めては打ち砕く 忘れるまで思い出して 失うまで逃がさない… 歪な螺旋 幾度目かの覚醒 あの笑い声が響く 早くしなければ また夜が明けてしまう もう一度この手で彼女を… 追憶は甘い果実 水面に揺れる淡い月のように 檻の外へ手を伸ばしても 滑り堕ちる針は止められない 蛹はいづれ蝶になると知り 逃げないよう羽を毟る せめて愛し合った証が欲しい 永遠に消えない傷痕を… (忘レモノハ在リマセンカ…?) 法が統べる檻の中で 終われない悪夢(ゆめ)を視ている 愛しい女性(ひと)を永遠(とわ)に渡り 殺め続ける物語… (その檻の中にいるのは誰…?)
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部品構造 大部品 森の中の村 RD 9 評価値 5部品 一見して森に見える 部品 獣道のような 大部品 森の家 RD 7 評価値 4部品 概要 部品 ぬくもりを感じる 部品 天窓 部品 家具一式 大部品 キッチンスペース RD 2 評価値 1部品 かまど 部品 地下貯蔵庫 部品 魔法の井戸 部品定義 部品 一見して森に見える 森の中で木々と木々の間を使い、森に溶け込むように建てられた家々。森との共存と、隠蔽性を両立させている。 部品 獣道のような 一見獣道にしか見えないが、木々に紛れる家々をつないでいる。下草で隠れているが、地面はちゃんと踏み均されており手押し車などでも安全に通行が出来る。 部品 概要 ごく一般的なるしにゃん王国の住家。耐火性に優れた木材で作られており、強度もそこそこにある。壁や屋根の補修など定期的なメンテナンスを必要とする。 間取りは、リビング、キッチン、寝室、トイレ、お風呂と、冷蔵庫代わりに地下部分にごく小規模な貯蔵室がある。 部品 ぬくもりを感じる 森の木々を利用することで、またその成長を極力阻害しないように建てられた家は、それぞれが奇妙な形に見える。しかし住人の手により屋内は住みやすく整えられており、木のぬくもりを感じることができる。 部品 天窓 採光のために天井に取り付けられた窓。天気のいい日は木漏れ日が差し込み、日常の中のささやかな癒しとなっている。 部品 家具一式 ベッド、テーブル、椅子、棚、作り付けのクローゼットなど。国内の木材で作られていて、それぞれDIYで自作をしたり、贔屓の職人がいたりする。 部品 かまど 薪を放り込み、火の魔法で着火するタイプのかまど。なるべく木々から離れた箇所に設置する。耐火性に優れたレンガで囲っており、火の始末には十分に気をつけている。 どの家庭のかまどにも、女神への祈りを捧げる意味でレリーフが彫られている。 部品 地下貯蔵庫 大体キッチンの近くにある。一年を通して低温低湿を保っており、食材などを保存しておける。ベーコンなどの加工肉や野菜、飲料などの鮮度を保つことができる。 部品 魔法の井戸 水路から綺麗な水を引き込んである程度貯めている井戸。滑車と縄に魔法が掛けられているため、滑車に掛けられた縄で繋いだ桶を井戸の中に投げ入れ、縄を二回ほど引っ張ると魔法により桶が持ち上がってくる。 二年に一度、縄と桶の交換と、魔法の掛け直しが必要となる。夏はこの中で果物をや飲み物を冷やせる。 提出書式 大部品 森の中の村 RD 9 評価値 5 -部品 一見して森に見える -部品 獣道のような -大部品 森の家 RD 7 評価値 4 --部品 概要 --部品 ぬくもりを感じる --部品 天窓 --部品 家具一式 --大部品 キッチンスペース RD 2 評価値 1 ---部品 かまど ---部品 地下貯蔵庫 --部品 魔法の井戸 部品 一見して森に見える 森の中で木々と木々の間を使い、森に溶け込むように建てられた家々。森との共存と、隠蔽性を両立させている。 部品 獣道のような 一見獣道にしか見えないが、木々に紛れる家々をつないでいる。下草で隠れているが、地面はちゃんと踏み均されており手押し車などでも安全に通行が出来る。 部品 概要 ごく一般的なるしにゃん王国の住家。耐火性に優れた木材で作られており、強度もそこそこにある。壁や屋根の補修など定期的なメンテナンスを必要とする。 間取りは、リビング、キッチン、寝室、トイレ、お風呂と、冷蔵庫代わりに地下部分にごく小規模な貯蔵室がある。 部品 ぬくもりを感じる 森の木々を利用することで、またその成長を極力阻害しないように建てられた家は、それぞれが奇妙な形に見える。しかし住人の手により屋内は住みやすく整えられており、木のぬくもりを感じることができる。 部品 天窓 採光のために天井に取り付けられた窓。天気のいい日は木漏れ日が差し込み、日常の中のささやかな癒しとなっている。 部品 家具一式 ベッド、テーブル、椅子、棚、作り付けのクローゼットなど。国内の木材で作られていて、それぞれDIYで自作をしたり、贔屓の職人がいたりする。 部品 かまど 薪を放り込み、火の魔法で着火するタイプのかまど。なるべく木々から離れた箇所に設置する。耐火性に優れたレンガで囲っており、火の始末には十分に気をつけている。 どの家庭のかまどにも、女神への祈りを捧げる意味でレリーフが彫られている。 部品 地下貯蔵庫 大体キッチンの近くにある。一年を通して低温低湿を保っており、食材などを保存しておける。ベーコンなどの加工肉や野菜、飲料などの鮮度を保つことができる。 部品 魔法の井戸 水路から綺麗な水を引き込んである程度貯めている井戸。滑車と縄に魔法が掛けられているため、滑車に掛けられた縄で繋いだ桶を井戸の中に投げ入れ、縄を二回ほど引っ張ると魔法により桶が持ち上がってくる。 二年に一度、縄と桶の交換と、魔法の掛け直しが必要となる。夏はこの中で果物をや飲み物を冷やせる。 インポート用定義データ [ { "title" "森の中の村", "part_type" "group", "children" [ { "title" "一見して森に見える", "description" "森の中で木々と木々の間を使い、森に溶け込むように建てられた家々。森との共存と、隠蔽性を両立させている。", "part_type" "part" }, { "title" "獣道のような", "description" "一見獣道にしか見えないが、木々に紛れる家々をつないでいる。下草で隠れているが、地面はちゃんと踏み均されており手押し車などでも安全に通行が出来る。", "part_type" "part" }, { "title" "森の家", "part_type" "group", "children" [ { "title" "概要", "description" "ごく一般的なるしにゃん王国の住家。耐火性に優れた木材で作られており、強度もそこそこにある。壁や屋根の補修など定期的なメンテナンスを必要とする。\n間取りは、リビング、キッチン、寝室、トイレ、お風呂と、冷蔵庫代わりに地下部分にごく小規模な貯蔵室がある。", "part_type" "part", "expanded" true }, { "title" "ぬくもりを感じる", "description" "森の木々を利用することで、またその成長を極力阻害しないように建てられた家は、それぞれが奇妙な形に見える。しかし住人の手により屋内は住みやすく整えられており、木のぬくもりを感じることができる。", "part_type" "part", "expanded" true }, { "title" "天窓", "description" "採光のために天井に取り付けられた窓。天気のいい日は木漏れ日が差し込み、日常の中のささやかな癒しとなっている。", "part_type" "part", "expanded" true }, { "title" "家具一式", "description" "ベッド、テーブル、椅子、棚、作り付けのクローゼットなど。国内の木材で作られていて、それぞれDIYで自作をしたり、贔屓の職人がいたりする。", "part_type" "part", "expanded" true }, { "title" "キッチンスペース", "part_type" "group", "children" [ { "title" "かまど", "description" "薪を放り込み、火の魔法で着火するタイプのかまど。なるべく木々から離れた箇所に設置する。耐火性に優れたレンガで囲っており、火の始末には十分に気をつけている。\nどの家庭のかまどにも、女神への祈りを捧げる意味でレリーフが彫られている。", "part_type" "part", "expanded" true }, { "title" "地下貯蔵庫", "description" "大体キッチンの近くにある。一年を通して低温低湿を保っており、食材などを保存しておける。ベーコンなどの加工肉や野菜、飲料などの鮮度を保つことができる。", "part_type" "part" } ], "expanded" true }, { "title" "魔法の井戸", "description" "水路から綺麗な水を引き込んである程度貯めている井戸。滑車と縄に魔法が掛けられているため、滑車に掛けられた縄で繋いだ桶を井戸の中に投げ入れ、縄を二回ほど引っ張ると魔法により桶が持ち上がってくる。\n二年に一度、縄と桶の交換と、魔法の掛け直しが必要となる。夏はこの中で果物をや飲み物を冷やせる。", "part_type" "part", "expanded" true } ], "expanded" true } ], "expanded" true } ]
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闇の中の系図 書名: 闇の中の系図 著者: 半村 良 イメージをクリックするとamazonに進みます 紹介 しがない一工員・浅辺宏一には類まれなる才能があった。それは“嘘”をつくこと。自らを嘘で飾り、世間を渡っていく彼の前に、秘密組織「黒虹会」が現れる。それは日本の歴史を裏から操りつづけてきた謎の一族・嘘部の集団であり、浅辺にもその一族の血が流れているという。黒虹会の一員として、浅辺は国際的な陰謀の渦中に巻き込まれていくのだが…。「嘘部シリーズ」の第一弾。 評価 評点:★★★★☆ ( 7/10点) 半村 良の奇伝小説の中でも高いレベルを持つシリーズの第一作.何より素晴らしいのは『嘘部』という職業(?)の発想で,『嘘部』浅辺宏一その人とそれを取り巻く人間模様が実に生々しく現実感を持って描かれています.分量も手頃で,是非読んでいただきたいシリーズの一つです.そのリアリティは読後しばらくは服部さんとか小見さんとかがいるとちょっと……って目で見てしまうほどです.やっぱり最大の『嘘部』は半村良その人自身かな... おまけ これは,私見ですが,実はこのシリーズ,初読なら発行順に読むよりも (第二作)闇の中の黄金→(第一作)闇の中の系図→(第三作)闇の中の哄笑 の順で読む方が理解もし易いし,深みもあるような気がします.
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「礼だ。色々教えてくれた分のな」 静まり返った中で、ポツリとクロウは言った。 彼の目の前で、頭を強打された男は力無く気絶している。 斬ったのではなく、刀の柄で殴ったのだ。 もし男を斬ってしまえば、刀の切れ味も悪くなるしアーマー類も汚れるからである。 クロウは、男を12階のフロア内へ放り、ドアを閉めた。 かなり力を入れて殴ったので、おそらくあと数時間は起きないだろう。 クロウは再び光学迷彩を起動し、階段を下り始めた。 「(『アレ』とは一体何だ…?)」 少なくとも、この町の警察たちを蹴散らせる程の兵器である事に変わりは無い。 「(思ったより面倒な事になりそうだな…)」 5階辺りまで降りた時、クロウはドアの外側から人のいる気配を感じた。 12階とは違い、そのドアに鍵は掛かっていなかった。 だが、覗ける程の隙間は開いていない。 「(何かある…か?)」 クロウは、試しにそのドアをノックしてみた。 しばらくするとドアが開き、先程の男と同じ格好の男が、ライフルを向けながら首を出した。 「(やはり…何かある様だな)」 クロウはドアノブを引っ張って一気にドアを開いた。 無論、光学迷彩を起動しているので、当然その男は驚く。 男がライフルのトリガーに指を掛ける前に、クロウは膝蹴りを鳩尾に喰らわせ、気絶させた。 倒れた男をまたいで、クロウはフロア内へ歩き出した。 注意深く辺りを見回しながら歩いていたクロウだったが、床に一筋の光の線が差しているのに気づいた。 見ると、とあるドアから光が漏れている。 更に、クロウの耳に話し声も聞こえてきた。 「順調だ。あと30分ほどで金の回収は終了する」 「警察の方はどうだ?」 「奴ら、最初の脅しが効いたんだろう。ただ喚く事しかしてない。 ほぼ計画は終了と見て間違いないだろう」 足音を立てずに近づき、ドアから中を覗くと、クロウは状況を把握した。 最初に会った男や先程の男と同じ、覆面の男達がデスクを囲んで話し合っていた。 おそらく、一番奥にいる大柄の男がボスだろう。 そのボスらしき男は呟いた。 「奴らが痺れを切らしてここに突入した時には、俺達はもぬけの殻…というわけだ。 俺たちの勝利は目前だな」 クロウは、室内の人数を数えた。 「(全員を一瞬で倒すには…ちょっと多過ぎるな)」 室内には、およそ10人前後の男達がデスクを囲んでいる。 5脚ほど並べられた椅子に座る者と、それを囲む様に立つ者。様子は様々だ。 そのうち、武器を持つ者は立っている5人ほどの男達。いずれもライフルである。 だが、座っている者たちも銃を隠し持っていると見ていいだろう。 「(さて、どうするか…)」 光学迷彩ならばボスに近づくのは容易だろう。 だが鍵を入手するとしたら、ボスを含め室内の全員を倒す必要がある。 クロウはナイフを取り出し、部屋に入ろうとした。 だがその時、何かが全速力で走ってくる音がフロア内に木霊した。 クロウだけでなく、室内の者たちも気づいた様である。 そしてクロウは、こちらに向かってくる男の姿を見た。 先程膝蹴りで気絶させた男だった。 だが、男はクロウには気づいていない様子である。 男は全速力でクロウの目の前の扉を開け、室内の者達に向かって叫んだ。 「ゆ、幽霊だ!幽霊が出たぁ!!」 クロウは心中で密かに苦笑した。 光学迷彩がデコイ達には珍しい技術とは言え、まさか幽霊と間違われるとは。 「…はぁ?」 と、部屋中の男達が言うのを、クロウは呆れながら聞いていた。 「と、とにかく来てくれぇ…」 と男が言ったので、仕方なく室内の半数ほどの男たちが部屋を出て行った。 間抜けにも程があるが、千載一遇のチャンスだとクロウは思い、室内へ入った。 そして内側から音を立てずにドアの鍵をかけると、室内を見回した。 座っている男が五人、手前に立っている男が一人、奥に立っている男が一人。 おもむろに、クロウは手前の男の腹を肘打ちで強打した。 「ぐあっ!!」 男の叫び声に、部屋中の男達が注目した。 既にその男に意識は無く、腹を抱えて倒れている。 「おいおい、どうした?」 座っていた男の一人が立ち上がり、男に手を差し伸べた。 クロウはその男の腹にパンチを入れ、奥の立っている男に向かって投げ飛ばした。 「な!?」 立っている男は予想外の事態に反応できず、投げられた男を顔面に喰らい、頭から床に叩きつけられ、気絶した。 「何者だ!?」 ボスは立ち上がり、拳銃を腰から取り出してドアの方へ向け、乱射した。 だが、正面のドアに無数の穴が穿たれるだけで、人の気配はしなかった。 そうしているうちに、いつのまにかボス以外の者たちは気絶していた。 不意に、背中に痛みが走り、ボスは銃を取り落とした。 「動くな」 静かに、だが鋭い声で、クロウはボスに言った。 「…だ、誰だ…」 低く野太い声からすると、中年くらいの男の様だ。 クロウはナイフを背中に突きつけたまま、静かに言った。 「人質を解放しろ」 「な…何だと?」 「あんたの手下から聞いた。 人質の入れられている金庫を開けるには、あんたの持つ鍵が必要だと」 「警察の回し者か…」 手下にしてもボスにしても、犯罪者の考える事は皆同じらしい。 まぁ、この町に犯罪者を捕まえるような物好きは警察くらいしかいないが。 「…早く鍵をよこせ」 クロウがそう言った直後だった。 階段の方に向かっていた者たちが戻ってきたらしい。ドアを叩く音が響いた。 また、先程ボスが銃を乱射した為、室内に異常があった事が知れてしまっている様だ。 「どうしたんだ!早く開けろ!!」 「おい、何があった!?」 ボスはこの状況が有利と判断したのか、かすかに笑い声を上げた。 「見ろ、これでお前は終わりだ。」 クロウはナイフを持ち直し、ボスの首に突きつけて言った。 「奴らがドアを蹴破る前に、俺はお前を殺せるぞ。 言っておくが俺はこれ以上待つつもりは無い」 ボスの首から一筋、血が流れた。 おそらくあと数ミリ、ナイフが首に食い込めば、頚動脈から血が噴出するだろう。 流石に焦ったのか、ボスは白状した。 「…ポケットの中だ」 「御苦労」 クロウはボスのズボンのポケットに手を入れた。 言った通り、鍵はその中にあった。 ドアが破られたのはその直後だった。 「どうした!?」 入ってきた仲間達を見るなり、ボスは屈んで、叫んだ。 「撃て!撃ちまくれ!!」 クロウはとっさに、背後の窓ガラスに飛び込んだ。 5階の窓から、一気にクロウの身体は落下して行った。 「…!!」 クロウは刀を抜き、ビルの壁面に突き立てた。 その途端、クロウの身体は、一瞬地に引っ張られ、止まった。 「全く…思った以上に手こずったな…」 辺りは暗い。どうやら警察が照らしていた壁面の裏側のようだ。 クロウが上を向くと、覆面を被ったボスが5階の窓から下を覗き込んでいるのが分かった。 「おい!まだ生きてるぞ!銃を貸せ!!」 ボスがそう叫んでいるのが微かに聞こえた。 気づくと、先程までは起動していた光学迷彩が解除されてしまっている。 クロウは急いですぐ下の階の窓ガラスを蹴り破り、刀を壁面から引き抜いて飛び込んだ。 「だ、誰だ!!」 目の前の廊下に男がライフルを構え、立っていた。 他の強盗達と同じく、覆面に防弾チョッキの格好だ。 「(しまった…!)」 少々焦りながら、クロウは地面を蹴って男に接近した。 だが、男がトリガーを引く方が早かったようだ。 何発かの銃弾がクロウのヘルメットのすぐ横をかすめ、背後の壁に穴を開けた。 だが次の瞬間、クロウの刀により男の持つライフルの銃身は斬り飛ばされていた。 「ひ、ひいいいぃ……」 クロウは刀の柄で怯え切った男を殴り、気絶させた。 「(最近簡単なディグアウトしかしてなかったツケが回ってきたか…)」 クロウは刀を納めると、左手首の操作盤を開き、光学迷彩を起動しようとした。 「(…意外と高いツケだな)」 先程落下しそうになった衝撃のせいらしい。操作盤は動かなくなっていた。 前に見た時は点灯していたデジタル時計も、表示されなくなっている。 クロウはしばらく、左腕を振ったり操作盤を叩いたりしてみたが、結局諦める事にした。 警戒しながら、クロウは片手にナイフを構えてフロア内を歩き出した。 「一階か…」 遠くに見える窓ガラスに映る警察の照明で、クロウは現在のフロアが分かった。 また、強盗襲撃時の警察との戦闘は熾烈を極めたのだろう。フロア内には割れたガラスや倒れたドア、多数の弾痕のある壁などが数多く見られた。 「(そろそろ強盗達の警戒も厳しくなる頃だろうな…)」 先程ボスを襲撃した為、少なくともクロウの存在は強盗達に知られてしまっている。 人質のいる地下1階の警備も厳重になってしまっているだろう。 階段に向かう途中、クロウは案内板を見て、とある事に気がついた。 今まではこの銀行は地下1階までだと思ったが、地下2階もあったのだ。 「(何故だ…普通、人質を隠すなら一番奥に隠すと思うが…。 地下2階には地下1階の様に人質を閉じ込められる金庫が無いのか?)」 この事実が、妙に頭に引っかかったクロウは、一先ず地下2階へ行く事にした。 だが、光学迷彩の無い今、これまでの様に階段を歩いていけば、おそらくは確実に見つかってしまうだろう。 クロウはエレベーターのドアをこじ開けた。 「(やはり…ここはノーマークか)」 エレベーターの内部は、上も下も敵の気配は無かったが、1階のフロアと同じく暗闇に閉ざされている。 クロウはバックパックからマッチを取り出して火を点け、下へ放った。 マッチの炎は、10メートルほど下で落ちたようだった。 「(これくらいの高さなら…大丈夫そうだな)」 クロウは、エレベーターの内側の鉄骨につかまり、ドアを閉めると、下へと飛び降りた。 かなりの衝撃と音がエレベーター内に木霊したが、強盗達が気づく様子は無い。 まだ消えていないマッチを拾うと、クロウはその火を頼りに地下2階のドアを探し当てた。 少しばかりドアを開けると、照明の光がクロウの眼に飛び込んできた。 「(ん…ここは照明が点灯しているのか…)」 ボス達のいた5階を含め、地上の全てのフロア内は照明が点灯していなかったのに対し、地下2階のフロアの照明は点灯している様だった。 「(単純に外から見えないからか…?それともやはりここで何か…)」 ドアから内部を伺うと、警備していると思われる強盗が二人組みで目の前を横切った。 「(ただ警戒してるだけか?それとも…)」 クロウは二人組みが遠ざかったのを確認して、ドアを開けた。 エレベーターの横にある、フロア内の案内図をクロウは見つめた。 やはり、地下2階の奥にも大規模な金庫室がある様だった。 手下やボスの話しぶりから、ここに人質を入れている可能性は低そうに思えた。 「(おそらく…ここに何かあるな…)」 途中の警備の強盗達を気絶させ、クロウは金庫室へ歩いた。 強盗達の数は5階よりも多かったが、出会うのは少人数のグループばかりだったので、即座に全員気絶させる事は容易であった。 金庫室へ辿りついたクロウの眼に、巨大な金庫が映る。 金庫と言うよりは、頑丈な部屋と言った方が正しいのかもしれない。 目前にある扉には、表面に鍵穴とダイヤルがついている。おそらくこの二つで施錠されているのだろう。 しかし、クロウが見た時には、どちらも機能してはおらず、金庫の扉は開いていた。 内部から話し声が聞こえてきたので、クロウは警戒しながら金庫の中を覗いた。 「(なるほど…こういう事か)」 金庫の奥の壁が破壊されており、そこから脱出口が開いている。 その周りの7人ほどの強盗たちは、おそらくこの金庫に元々あったものであろう、大量の札束を鞄に詰め込んでいた。 その強盗たちは、ここまで侵入される事を想定していなかったのか、武器類を持っていない様である。 「これが上手くいけば、俺たちの生活もようやく楽になるな」 「全くだ。俺たちをコケにした奴らにも一泡吹かせられるし、一石二鳥だな」 などと、喜々と語り合う強盗たちに呆れながら、クロウは金庫内へ入った。 「…沢山の人々を危険に晒してまで、自分が楽になりたいか」 「な、何だお前!!」 クロウの姿に、強盗たちは瞬時にパニックに陥った。 その後は、クロウにとってはボスに鍵を出させるより簡単だった。 1分もしない内に、7人の強盗たちは、瞬く間に倒されていた。 クロウは、おそらく強盗たちが脱出に使うだろう穴を見つめた。 人一人分が通れる程度の大きさである。 金庫の強靭な壁は容易く破られており、その奥には、下水道が見えた。 強盗達の話し声が消えれば、下水道の流れる音だけがフロア内に響いている。 「(5階のボス達が警察を引き付けている間に、金を持った者達はここから逃げ出す…か。 その辺の空族よりは綿密な作戦…と言えなくは無いか)」 言いながら、クロウは脱出口の傍らにある物体を見つめた。 比較的大きなドリル。金庫の壁を破壊し、脱出口を開いたのはおそらくこれだろう。 だが、大規模な工事に使うには少々小さ過ぎる代物であった。 クロウは、このドリルを前にどこかで見た様な気がした。 「(どこだったか…思い出せないな…)」 クロウは、思い出せないが、本当に身近にあった様な気がして、思わずドリルを持ち上げた。 ドリルはかなり重かったが、一人で持てない重さではなかった。 ディグアウトで使うくらいが丁度良い大きさと重さである。 そこまで考えた所で、クロウはこのドリルをどこで見かけたのか思い出した。 「(まさか…)」 クロウの頭を嫌な仮定が通り過ぎたが、ここでは事実を確かめようも無い。 とりあえず彼は、地下1階の人質たちを解放する事にした。 まず階段に行き、クロウは下の階から、慎重に地下1階の様子を伺った。 強盗の手下の一人は、階段の踊り場にあるドアに寄り掛かり眠っている。 「(…末端はこの程度か)」 クロウは即座に、音も無く飛び掛り、手下の男の腹に肘打ちを見舞った。 呻き声を出し、男はその場に倒れた。 「ん?どうした?」 ドアの内側にいたと思われる手下の一人が呻き声を聞きつけ、ドアを開けて様子を見に来た。 その男は倒れている男を発見したが、声を出す事はできなかった。 ドアの陰にいたクロウに首を絞められていたからだ。 結局、その男も首を絞められたまま、気を失った。 クロウは、ドアからフロア内を窺った。 地下1階のフロアは、地下2階と同じ様に電気が点灯している。 クロウは他に手下がいないのを確認すると、フロア内に侵入した。 案内図を見ると、地下1階の構造は地下2階の構造と同じ様である。 クロウは、人質が閉じ込められていると思われる金庫室へ向かった。 途中、何度か手下達と遭遇したが、その度に即座に気絶させて、クロウは進んだ。 しかし、人質の近くとなると、流石に遭遇する人数もこれまでのフロアより多い様である。 だが、それはクロウも予想していた事だ。 「(このまま無事に人質を解放できれば良いんだがな…)」 突如『何か』を感じ、クロウは振り返った。 だが、そこには誰もいず、電灯に照らされた廊下が広がっているだけである。 「(気のせいか…?今、火薬の臭いが…)」 瞬間、クロウの右真横の壁が爆ぜた。 「…!!」 激しい衝撃がクロウを襲い、彼の身体は左側の壁を突き破り、その奥の広いオフィスまで吹き飛ばされた。 「見つけたぞ…!!」 先程聞いた、強盗達のボスの声がオフィスの中に響いた。 次の瞬間、先程クロウの身体が突き破った壁を薙ぎ倒し、何かとても巨大なものがオフィス内へ、悠然と入ってきた。 クロウは体勢を立て直し、声のした方を見据える。 「なるほど…それがお前達の切り札か。警察を倒した程の」 それは、巨大な象の姿をした兵器だった。 身体の所々に重火器を搭載し、その鋭い牙は、電灯に照らされ輝いていた。 その大きさは、フロアの天井付近にまで達し、10メートル四方はあるオフィスの4分の1を占領していた。 その頭部が開いて、ボスが姿を現した。 「もう許さんぞ。この俺をコケにした貴様は!」 「…そうか」 クロウはボスを見据え、両腰の二本の刀を抜く。 「おっと、お前の相手はこいつだけじゃないぞ!」 象型の兵器の両側から、二体の兵器が飛び出し、クロウに躍り掛かった。 獅子の形をしたそれらは、接近戦用の兵器らしい。その爪と牙は、易々とクロウのアーマーを切り裂けそうなほど鋭く、既に多量の血が付いていた。 二体は鏡に映したように対称的に動き、その爪は確実にクロウを狙って突き出された。 クロウは少しばかり驚きながらも、両手の刀で双方の爪を受け止める。 獅子達ではなく後ろの、象型の兵器の中にいるボスにその眼を向け、クロウは言った。 「ようやく…本気で潰しに来たか」 獅子型の兵器は一旦後ろへ退き、クロウに向かって吠え立てた。 その体長は3メートル程で、スマートな姿をしている。 全身赤茶色で、たてがみの部分は体よりも濃い色合いだ。 クロウは、その獅子達の姿が気にかかった。 (あの身体…どう考えても人が入るには無理が有り過ぎるな…。 先程の動きから考えても、やはり無人機か。と言う事は動きを制御しているのは…) とその時、象型の兵器の、背中の部分にある砲塔が火を吹いた。 「…!!」 クロウはとっさに横っ飛びで砲撃を回避した。 砲弾はクロウの前にあったデスクを薙ぎ倒し、床に大穴を開ける程のものだった。 (なるほど…象型の兵器が遠距離用で、獅子型が近距離用というわけか…。) 先程の砲撃で、まわりのデスクにあった書類が宙を舞っている。それを目障りに感じながら、クロウは歩き出した。 途端に、獅子型の兵器が走り出す。 二体はデスクの間を縫う様に動きながら、クロウの左右から飛び掛った。 クロウは二体を引き付けつつ、爪が当たる寸前で後ろへ跳んだ。 予想通り、二体は一瞬前にクロウがいた所で激突していた。 「(やはり…この動き方、誰かが遠隔操作しているな…。 この状況で考えられるのは…)」 クロウは、二体の向こうにいる象型の兵器を見た。 獅子達が動いている間、象型の兵器は動いていない。 おそらく、内部にいるボスは獅子達を動かすのに四苦八苦しているのだろう。 クロウは獅子達を飛び越え、象型の兵器に近づき、言った。 「…お前の負けだ!」 獅子型の兵器から、ボスの声が響いた。 「な、何だとぉ!!」 クロウは左手の刀を納め、背後の獅子達を指差しながら、言った。 「お前の手下が言ったよ。『これら』は空族から横流しされた兵器だとな。 他の手下達も言っていた。『これが上手くいけば、生活が楽になる』とな。 お前達、この銀行強盗を計画する前は、ごく普通のこの町の市民だった。違うか?」 「な…何ぃ…!!」 「空族とは違い、これらの兵器を使い慣れていない様子だな。ライオン達の動きで分かった。 使い慣れてない状態でも警察は倒せただろうが、俺は違う。」 クロウは象型の兵器に、そのコクピットにいるボスに右手の刀を向け、言った。 「…お前にはもう、勝ち目は無い」 「ほ…ほざくなぁ!!!」 象型の兵器は、その全武装を滅茶苦茶に撃ち始めた。 だがどの弾も、歩みを進めるクロウに当たりはしなかった。 「こ…こんな所で終わって…終わってたまるかぁーーー!!」 ボスは、今度は獅子達にクロウを襲わせた。 背後から襲い来る二体の獅子達を、クロウは振り向きざまに切り裂いた。 獅子達は飛び掛った姿勢のまま、クロウの左右にあるデスクに突っ込み、動かなくなった。 二体とも、その頭部の口から上の部分は切り裂かれ、クロウの後ろに転がっていた。 おそらく、切り裂かれた部分が命令を受信していたのだろう。もう獅子達は動かなかった。 「ぬ…ぬうううぅ…」 その光景に、ボスは唸る事しかできなかった。 「(せめて象の操作と獅子の操作を別々の者がやれば少しはマシになってだろうに…)」 そう思いつつ、クロウは象に近づいて行った。 圧倒的な力の差を感じ、ボスは屈辱と悔しさを感じていた。 自信を持っていた計画が、思わぬ乱入者に潰されようとしているのだ。 ボスにとっては、我慢ならない事態だった。 「完璧だ…完璧だった筈だ…この計画は…」 ボスがそう言うと共に、象型の兵器の牙が徐々に赤くなり始めた。 「(…何だ…?)」 その牙から、高温の熱が発生している事に、クロウは気づいた。 「お前如きに、この計画を潰されてたまるかぁーーーー!!」 突如、象型の兵器は突進を開始した。 「何…!?」 多数のデスクを薙ぎ倒しても、その勢いは衰えを見せない。 クロウは横に飛び退こうとしたが、一瞬遅かった。 彼の身体は吹っ飛ばされ、遥か後方の壁に激突した。 「ぐ…!」 脇腹のアーマーが砕け、焼け焦げている。どうやら一瞬あの牙にかすったらしい。 脇腹の痛みが、内部の肉体までダメージを与えられた事を物語っていた。 「(戦意喪失したと思ったが…詰めが甘かった様だ…)」 バックパックから包帯を取り出すと、クロウは立ち上がった。 象型の兵器は、再び牙を発熱させ、クロウに突進しようとしている。 クロウは左手で包帯を巻きながら、目の前のデスクの上に上った。 そして、右手に持っていた刀を納め、再びボスに向かって声を上げた。 「もう一度言う。お前に勝ち目は無い!」 「死ねぇーーー!!」 凄まじい速さで突進する象型の兵器に対し、クロウはナイフを取り出すと、投げつけた。 ナイフは寸分の狂い無く、象型の兵器の、右のアイセンサーに突き刺さった。 「な、何ぃ!!」 操作を誤ったのか、象型の兵器は勢いのまま姿勢を崩し、そのまま壁に突っ込んだ。 「(俺もまだまだだな…)」 クロウは目の前の光景を見つめながら、自嘲気味にそう思った。 ディグアウターになってから、クロウが傷を負うのは滅多に無い事であった。 彼が傷を負う場合は大抵、油断か慢心かが原因である。 今回もそれが原因であった。 「(反省する前に、始末はつけなくてはな)」 クロウは刀を抜くと、まだ立ち上がろうとしている象型の兵器を見据える。 デスクを足場にしながら、瞬時に象型の兵器に接近した彼は、その巨大な胴体を真っ二つに斬り裂いた。 次の瞬間、傷口を中心に象型の兵器は大爆発を起こした。 爆発から出てくると、クロウは刀を鞘に納める。振り向いて、爆発に巻き込まれたであろう強盗達のボスに、言った。 「地獄で反省しろ」 次の瞬間、警報と共に天井から水が噴射された。 破壊した兵器から立ちのぼる炎で、銀行内のスプリンクラーが作動したのだ。 水に濡れながら、そこら中に散乱する書類やデスク・椅子の破片を掻き分けて、クロウはオフィスから出て行った。背後の瓦礫の中で人影が蠢いていたのに気づかぬまま。 金庫室。先程のスプリンクラーのおかげで、手下達は軽いパニックに陥っている。 「(これは…好都合だな…)」 クロウが室内の様子を窺っていると、部屋の外の様子を見に行こうと3、4人の男達が部屋から出てきた。 彼らも浮き足立っていた様で、クロウが彼らを気絶させるのは容易な事であった。 再び金庫室を見ると、中にいる手下は2人しか残っていない。クロウは一気に室内へ突入し、たちまち彼らも気絶させた。 最後の一人を倒すと、クロウは、人質の閉じ込められている金庫に目を移した。 金庫の扉は、地下2階のものと同じく鍵とダイヤルがついたものである。 クロウは鍵穴に、先程ボスから奪った鍵を入れると、ダイヤルを回し始めた。 「(…こういう時の為の装備を持ってくるべきだったか…)」 一向にドアは開く気配は無かった。 いくら元粛清官でディグアウターのクロウでも、ダイヤル式の金庫を無理矢理開けるのは初めての経験だったのである。 一向に開きそうに無いダイヤルを相手に数分間奮闘したクロウだったが、相手はそれなりに名のある銀行の大金庫である。 「(全く…いい加減にしてくれ…!!)」 遂にクロウはダイヤルを諦め、思い切り刀でドアに斬りつけた。 すると、呆気無くドアは開いてしまった。 内部には、目隠しされ、口にガムテープを巻かれた人々が大勢座っているのが見える。 「(………)」 腑に落ちないものを感じながら、クロウは金庫へ足を踏み入れた。 下の階のものと同じ様に、金庫内はかなり広く、その壁は厚かった。 幅、奥行き共に10~15メートルほどで、中には20人ほどの人々が座っている。 その多くは、事務員や銀行員ばかりである。 皆、手首を縛られ、布で目隠しされ、口をガムテープで塞がれていた。 クロウは、その中で一人だけ異質な格好の男を見つけた。 他の人質と同じ様に目隠しされ、口にガムテープを張られているが、その格好はスーツやネクタイではなく、薄汚れた作業着であった。 頭には頭髪が一本も無く、その代わりと言っては難だが黒い口髭を生やしていた。 その頬は、中年の男相応のしわが刻まれている。今は見えないが、おそらく目尻の辺りも刻まれているだろう。 クロウは、その男に見覚えがあった。 「(…事情を聞く必要があるな)」 クロウはその男の目を覆っている布を解いた。 男は驚愕した様子で、布を解いたクロウを見た。 クロウは、周りの人質に聞こえない程度の声で男の耳に囁いた。 「テープを外す。騒ぐな」 クロウは、男の口を覆うテープを一気に剥ぎ取った。どうやらかなりの痛みが生じたらしく、男は低く呻き声を上げた。 落ち着きを取り戻した後、男は口を開いた。 「な、何であんたがここに?」 クロウは座り込む男を見下ろし、言った。 「それはこっちの台詞だ、ジャンク屋」 そう、この男こそ、数時間前にクロウが立ち寄ったジャンク屋の主人なのだ。 「そ、それは…」 ジャンク屋の主人は、言葉に詰まった様に言った。 クロウは、言葉を続けた。 「この下の階に、あんたの店で見かけたディグアウト用のドリルを見つけた。 事情を説明してくれないか…簡潔に」 「おいおい、もうそこまで調べはついてんのか…」 ジャンク屋の主人は、観念した様に言った。 「奴らに…強盗達に加担してたんだよ。ついさっきまでな。 だが俺には元々そんな度胸は無かったんだ…降りたいと申し出たよ。 そしたら、ここに押し込まれた」 クロウは溜め息をつき、言った。 「何故奴らに加担した?」 「あんたは知らなかっただろうが、うちでまともな客はあんたくらいだったよ。 最近は経営が苦しくなってきてな…。 そんな時にタイミングよくこの話を持ちかけられた。思わず乗っちまったよ」 ジャンク屋の主人は諦めたのか、淡々と話していた。 「随分短絡的な動機だな…」 クロウは主人の言葉に、心底呆れた様な声を出した。 「正直、失望したぞ。こんな銀行強盗に手を貸すくらいなら、他に方法があった筈だろ」 「そんなに甘くは無いよ…この町はな」 このまま話していても埒が明かない、そう判断したクロウは、言った。 「警察に自首しろ。でなければ俺がお前を警察に突き出す」 主人は、慌てた様に言った。 「そ、そんな事、奴らに降りると申し出た時から決心してる」 クロウは主人を睨んだ。 「嘘をつくな。俺がここに来なければ、あんたは明日も、何事も無かったかの様に振る舞いながらジャンク屋を続けていた。違うか?」 10秒程の沈黙の後、悔しそうにジャンク屋は呟いた。 「…ああそうだよ。ったく、あんたにはいつも敵わない。 人生経験は俺の方が上の筈なのに…畜生」 再びの沈黙の後、決心した様にジャンク屋は立ち上がった。 「…せめて償いはする」 ジャンク屋の言葉に、クロウは無表情に言った。 「なら…人質の拘束を解いてくれ。それと、俺と一緒に人質達の誘導を頼む」 クロウはジャンク屋の主人と共に、人質達の拘束を解いていった。 人質達は最初、クロウとジャンク屋を強盗達かと勘違いしていたが、他の強盗達との格好の違いなどもあって、誤解はそれほど長くは続かなかった。 人質達の反応は、怯えている者、同僚と話す者、クロウに説明を求める者など様々だった。 最初はその声も静かなものだったが、拘束を解いた人数が多くなるほど、彼らの声もかなりの大きさのものとなっていった。 全ての人質の拘束を解き、彼らの声を静めるのに、クロウはしばらく時間がかかった。 やっとの事で人質達を静かにさせると、クロウは彼らに呼びかけた。 「この下の階の金庫に、下水道に繋がる脱出口がある。 そこから地上に脱出し、警察に助けを求めてくれ。 フロア内はスプリンクラーが作動してびしょ濡れになっている。滑らない様に注意しろ」 そう伝えると、クロウは彼らとともに下の階の金庫を目指した。 地下1階と地下2階の手下は全員気絶させたが、1~5階はまだ手下がいる可能性があるからである。 ほとんどの手下はクロウが気絶させたので、移動は容易であったが、途中で様子を見に来た上の階の手下たちを気絶させる必要もあった。 そうして、やっとクロウと人質達は、地下2階の金庫室まで辿りついた。 「全く、やっとこの事件も終わりだな」 脱出口まで人質達を誘導する事ができたクロウは、ポツリとそう言った。 「ここを歩いて行けば、いずれ地上に出られる梯子が見つかるだろう。 地上に行ったら、警察に助けを求めろ」 脱出口の前まで行くと、人質達にそうクロウは言った。 人質達は、急ぐ者やクロウに礼を言う者など様々だったが、全員無事に脱出して行った。 「クロウ、この後、お前はどうするつもりだ?」 脱出口の前で、最後の一人…ジャンク屋はクロウに尋ねた。 「人質が脱出したと分かれば、強盗達もおとなしく投降するだろう。 切り札の兵器もボスももういない。奴らに抵抗する術は無い」 「そうか…よかった…」 安心した様子のジャンク屋に、クロウは語調を強め、言った。 「お前は、ちゃんと自首しろよ?」 「ああ…分かってるよ」 静かにそう言うと、ジャンク屋の主人は脱出口を歩いて行った。 クロウはジャンク屋の主人が歩いて行くのを見届けると、フゥと溜め息をついた。 「(ミッションコンプリート…と言った所か)」 後は警察に任せても問題無いだろう、そう思い、クロウも脱出口へ入ろうとした時だった。 微かに焦げ臭さが、彼の鼻をかすめた。 「(…何だ?)」 ふと下を見ると、クロウは妙な足跡がある事に気がついた。 綺麗な黒い線が、靴底の形を表している。 微かな焦げ臭さが、その黒い線から発せられている事に気づいたクロウは、それに触れてみた。 アーマーに覆われた手に付着した粉。それが、焼けて粉末状になった鉄だと気づくのに、そう時間はかからなかった。 クロウは、脱出口に向かうその足跡を眺めた。 多数の人々が通ったので、かすれているものや、ほぼ無くなっているものもあるが、金庫の入り口からこの脱出口まで、一直線に続いている事は分かった。 「………」 その足跡は、まだできて数分しか経っていないかの様に新しかった。 「(あれで死なないとは…何て奴だ…!)」 クロウは、すぐに全速力で脱出口を走って行った。 後編へ 月の中の男・目次
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籠の中の鳥 (惹かれあう魂) (神速の勝利者(ヴァンガードスターター)) (復活の象徴) COMMAND C-049 赤 1-3-0 U (防御ステップ) 戦闘エリアにいる、「戦闘配備」を持つ敵軍ユニットX枚をロールする。Xの値は自軍手札の枚数を上限とする。 移動 出典 「コードギアス反逆のルルーシュR2」 2008
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闇の中の黄金 書名: 闇の中の黄金 著者: 半村 良 イメージをクリックするとamazonに進みます 紹介 雑誌の特集で邪馬台国を取り上げることになった津野田のもとに親友・乃木の自殺が知らされる。驚いたことに彼もまた、邪馬台国について調査中だったというのだ。取材を始め、国東半島へ飛んだ津野田は、そこで「マルコ・ポーロ・クラブ」なる金業者の集団に遭遇する。「何かが裏にある」―そう感じながら調査を進める津野田は、邪馬台国と黄金とを結ぶ意外な事実を発見するのだったが…。「嘘部シリーズ」の第二弾。 評価 評点:★★★★☆ ( 8/10点) 半村良の奇伝小説の中でも高いレベルを持つシリーズの第二作にて最高傑作.『嘘部』という職業(?)の発想もともかく,邪馬台国がどこにあるのかを求めて突き進む津野田の言説が半村良その人の言説と重なって尋常でない迫力を醸し出しています.もちろん邪馬台国を取り巻く学説や一般環境がこの小説の発表時期(1970年代)とは大きく異なっていることは重々承知ですがそれでも引き込まれずにはいられない熱気がそこにあります.半村良の持つ構成力と広大な知識がマッチした傑作です. おまけ これは,私見ですが,実はこのシリーズ,初読なら発行順に読むよりも (第二作)闇の中の黄金→(第一作)闇の中の系図→(第三作)闇の中の哄笑 の順で読む方が理解もし易いし,深みもあるような気がします.
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「ふ~む…」 広げた新聞を見て、男は一人呟く。 ここはとある研究室。 灰色がかった白色の室内には、複雑な構造の機材などが所狭しと置かれている。 壁には重そうな扉があり、その扉から見て正面には、壁一面を覆うほど巨大なモニターが設置されていた。 その両側の壁際には、ホルマリン漬けにされた珍妙な生物の入った瓶が並べられた棚がある。 モニターの前には広いデスクがあり、そのデスクの前に男は腰掛けていた。 酷く白い肌の色をしていて、頭髪は短く切り揃えられた金髪である。 白衣を着ており、20代後半から30代前半くらいの整った顔には片眼鏡が掛けられていた。 男のデスクの上には、何冊もの、色々な種類の新聞が置かれていた。 男は今、その中の最後の新聞を読んでいる。 男がふと顔を上げた時、ゴトンと鈍い音が響き、男の後ろにある重々しい扉が開いた。 扉からもう一人、男が入ってきた。 紺色のアーマー、赤いバイザーの付いたヘルメット、黒いスカーフ その顔は16~17才くらいの顔立ちだった。 両腰には、赤い柄と青い柄の二本の刀が見える。 新聞を読む男は、入ってきた男を見るなり、言った。 「やあミラージュ君。ああ、今はクロウ・エリュシオンと名乗っていたっけ」 クロウ・エリュシオンと呼ばれた紺色のアーマーの男は、不機嫌そうに答えた。 「どっちでもいい。わざわざ呼び出した理由を答えろ、ノア」 ノアと呼ばれた男は、クロウに向かって今まで読んでいた新聞を放りながら、言った。 「ディグアウトはうまくいっているかね?」 そう、クロウ・エリュシオンはディグアウターである。 彼は、ヘブンの一等粛清官、ロックマン・ミラージュであったと言う過去を持っている。 もう一人のノアという男は『自称』科学者だが、その正体はクロウも知らない。 ただ、クロウがもといた場所であるヘブンについて、かなり詳しく知っており、ただの科学者ではない事はクロウも分かっている。 また、自分の正体を明かさない事だけでなく、その偉そうな態度も相俟って、クロウはノアが好きではなかった。 そのせいか、彼らは今の所『利害の一致』という関係だけで繋がっている。 具体的には、ノアがディグアウトに使えそうな装備を開発し、クロウが使う。そこで得たデータを元に、ノアは研究を続ける、というものである。 彼らがいつどこで出会い、何故この様な関係になったのかは、また別の物語で語られるだろう。 クロウは数ヶ月に1回ここにやってくるのだが、今回は突然ノアに呼び出された。 ノアの研究室は、行くのには面倒な場所にあり、クロウが不機嫌なのはこのせいでもあった。 数々の機材の間を進み、ノアに近づいたクロウは、彼の問いには答えず、新聞を取った。 「ちょっと、その記事を読んでみたまえ。損にはならない情報が載っているよ」 クロウは、新聞を広げると、ノアが指差した記事を黙って読み始めた。 その記事には、『ロック・ヴォルナット』というディグアウターの少年が、『カトルオックス島』という島で幾度も攻め来る空族を打ち倒し、遂には伝説にあった災厄から島を救った、と言う活躍が簡潔に纏められ、そのロック少年の写真が載っていた。 「…これがどうした」 クロウの言葉に、ノアは意味ありげな笑みを浮かべると、言った。 「その記事に載っているのが『ロックマン・トリッガー』だよ。ミラージュ君」 「…何だと?」 クロウは、もう一度新聞に載っているロック少年の写真を見た。 笑顔で手を振っている少年の姿があった。 ロックマン・トリッガー。 マスターの遺志を受け、ヘブンに反旗を翻し、マザーと相打ちとなった粛清官。 ノアは、記事には書いていない事を話し始めた。 「その島で空族と戦いながら、『ロック・ヴォルナット君』はディグアウトを続けた。 そして、遺跡の最深部で司政官を起動させてしまったんだ。 結局、彼は司政官を倒し、彼の外部記憶装置がエデンを帰還させたよ。1年ほど前の話だ」 ノアの話を黙って聞いていたクロウだったが、顔を上げた。 「…それが本当だとしても、今の俺には何の関係も無い話だ。用件はそれだけだな?」 クロウの言葉にノアは、ゆっくり肘掛に肩肘をつきながら言った。 「たまには君もその記事みたいな活躍、してみたらどうだね?」 このノアの発言で、しばらくその場に重苦しい沈黙が走った。 「…本気で言ってるのか?」 呆れたような口調で、クロウはそう言って沈黙を破った。 すると、ノアは先程の発言の本心を語った。 「そうすれば色々とデータが取れて私も得なんだがねぇ」 クロウは再び呆れ、この研究室ではもう何度言ったか分からない台詞を口にした。 「俺をモルモットと一緒にするな」 クロウは踵を返し、自分が入ってきた扉へ向かった。 「ロックマン・ミラージュ君」 ノアの呼び声に、クロウは足を止めた。ノアは話を続ける。 「その島の司政官に一度倒されたロック・ヴォルナット君に協力したのは、彼と戦っていた筈の空族達だったらしい」 ノアの話の意図が分からず、クロウは怪訝そうな顔で振り向いた。 「…だから何だと言うんだ」 「世の中にはね、悪人に見える善人や、その反対もいる。 くれぐれも、気をつけたまえ」 その発言が何を意味するのか、やはりクロウには分からなかった。 だが、彼にはそれを聞く気も起こらなかった。 結局、クロウは再び歩き出し、ノアの研究室を出て行った。 午後8時。 ここはこの世界でもある程度発展した都市の一つ。 中心部にいくつかのビルがあり、それを囲む様に民家やマンション、アパートなどの居住施設が配置されている、と言う構造の都市である。 クロウはこの町をしばらく歩き、町外れの一軒のアパートに辿り着いた。 敷地面積はそれ程でもないが、高さはこの辺の建物では一番高いアパートである。 このアパートの一室が、クロウ・エリュシオンの住居なのである。 住居と言っても、彼はディグアウターである為、ここにはほとんど長居はできない。 帰ってきた彼は、まず私服に着替えた。 次に、数ヶ月放置したままの部屋を、一時間を費やし掃除する。 それが、彼がここに帰って来た時に、常にまずする事であった。 ひとしきり掃除が済むと、彼は椅子に座り、テレビをつけた。 テレビでは、この都市の銀行に武装した強盗が押し入ったとのニュースが報道されている。 強盗達は多数の人質を取り、銀行に立て篭もっているらしい。 映像では、銀行から離れた場所で、中継のレポーターが話をしていた。 しばらくそのニュースを眺めていたクロウだったが、ふと夕食を摂っていない事に気がついた。時計を見ると、夕食には少し遅い時間となっていた。 彼はテレビを消し、ジャケットを羽織ると、近場の食堂へと歩き出した。 外は、この時間帯には当然だが、人影は見当たらなかった。 辺りは暗かったが、街灯や近くの住宅の明かりで視界は良好である。 秋の初めと言う季節のせいか、少し涼しい気候だった。 見上げると、空には満月が輝いている。 しばらく歩いていたクロウだったが、ふと途中で立ち止まった。 馴染みのジャンク屋に寄っていく事を思い立ったのである。 いつもこの町に帰る度に、クロウはそのジャンク屋に行っていた。 ディグアウト用の装備の整備ももちろんあるが、この町にほとんどいないクロウにとっては、そのジャンク屋はこの町の情報源なのである。 近場の食堂へは少しばかり回り道になるが、クロウは行く事にした。 店の前まで来て、変だな、とクロウは思った。 目的のジャンク屋は閉まっていた。 中は電気もついておらず、また人のいる気配も無い。 いつもならこの時間にも開いている筈なのだが。 この店の主人は元気で頭も良く、滅多に風邪をひかない人物である。 扉のノブを捻ってみたが、鍵はしっかりかかっている。 窓も閉まっており、泥棒が入った可能性は無さそうだった。 店の主人に家族は無かった筈だが、親戚などの身内に何かあったのか、と勝手に推測して、クロウはその場を後にした。 「俺さっき銀行の前通ったけどさ、酷いもんだったぜ」 食堂で料理を注文したクロウの耳に、不意に隣の客達の話が入った。 どうやら話の内容は、先程クロウがテレビで見た銀行強盗の様である。 「犯人側の武装が凄くてな、警察なんか全然歯が立たなかったみたいだったよ」 相手の男はのんびりとした口調で相槌を打った。 「へぇ~、そんなに凄い銀行強盗だったのか」 「ああ。あの武装は空族並だったね。ありゃ銀行強盗なんてもんじゃない。 武装集団だよ。ああ、怖い怖い。俺は警察にならなくてよかったと思ったねぇ」 「警察の方、そんなに酷い状態だったのか?」 「ああ。負傷者多数だよ。このままじゃ人質もヤバイだろうねぇ」 そう言った時、料理が運ばれてきたので、客達の話は少し中断した。 クロウはいつの間にか、その客達の話に注意を注いでいた。 自分の料理も運ばれたので、クロウは料理を頬張りながら、再び隣の客達の話を聞いた。 が、その後の話は、銀行強盗とは何の関係も無い世間話であった。 その時ふと、ノアの話がクロウの頭によぎった。 だが、ノアの話はクロウにとっては不快以外の何者でもない。 それを振り払い、クロウは料理を食べ終えると、アパートへの帰途に着いた。 アパートの自室に戻ったクロウはとりあえず椅子に座り、テレビをつけた。 どのチャンネルでも、銀行強盗のニュースばかりである。 「…全く」 クロウの脳裏に、先程の客達の話が蘇った。 彼は立ち上がり、窓の外を眺めた。 前述の通り、このアパートはこの辺の建物では一番高く、彼の部屋の窓からは数キロ先まで見渡すことができる。 クロウは、銀行の方角を見つめた。 幸い、彼の窓からでも銀行の建物は見ることができた。 その巨大な銀行の建物は、いくつかの警察の照明に照らされている。 ふとクロウは、眼下に見える街並みの方に眼を向けた。 光の灯る建物の数々や街灯が点々としているだけで、動くものは無かった。 「………」 クロウは、窓を閉める。 そして室内に眼を向け、溜め息をついた。 「全く。俺も馬鹿だな」 クロウは、帰ってきた時にまとめてしまっておいたディグアウト用の装備を取り出した。 そして、すぐにアーマーに着替えると、首にスカーフを巻き、ヘルメットを被り、二本の刀を持った。 5分も経たずにディグアウターの姿へ変わったクロウは、まずアパートの屋上へ向かった。 だが、彼はこのアパートの屋上へ上がるのは初めてである。 幸い、屋上へ繋がるドアに鍵はかかっていなかったが、ドアの部品は錆び、とても開けにくい状態だった。 無理矢理ドアをこじ開け、屋上を覗くと、そこは人一人いない、寂しい場所だった。 今時、ここから銀行を眺めるよりテレビを見た方が、状況が分かるのだろう。 「…好都合だな」 そう、それが今の彼には幸いな状況なのである。 空を見ると、先程まで満月が輝いていたが、今は空の殆どが雲に覆われてしまっている。 そのせいか、周りの町を見回すと、銀行の騒ぎが際立っているように見えた。 クロウは眼を閉じ、静かに溜め息をつくと、アーマーの左手首の部分を開いた。 パカリと開いた左手首のアーマーの下には、色々なボタンのついた操作盤があった。 この操作盤で、彼のアーマーの色々な機能を操作できるようになっているのである。 彼は、操作盤に設置されているデジタル時計を見た。 時計は、緑色の文字で『21:59』と表示されている。 時計が『22:00』と表示されると同時に、クロウは操作盤の最後のボタンを押した。 すると、彼の姿はその場から消えた。 「全く…これでまた奴の思惑通りだな」 本当に消えたわけではない。 『光学迷彩』…物体を光学的にカモフラージュする技術。これが彼のアーマーの機能の一つなのだ。 ただし、この機能はアーマー内に取り付けられたバッテリーを急激に消費するため、連続使用は60分が限界なのである。 これはノアの技術である。ノアの技術はノア自身よりも信用できる、とクロウは半ば考えている。 クロウは操作盤を閉じ、屋上の柵の上に、バランスを取って立った。 そしてそこから、彼はアパートの周辺では一番高い民家の屋根に跳び移った。 同じ要領で彼は建物の屋根を跳び移り、銀行へ向かう。 彼からすれば地上の道を行くより、この移動方法の方が手っ取り早いのだ。 ただし、誰かに見つかれば面倒な事になる、と言うリスクもあるが。 気がつくと、先程まで輝いていた満月は、雲に覆われてしまっている。 不吉なものを感じながら、クロウは進んで行った。 銀行に近づくにつれて、騒ぎはクロウの予想よりも大きなものである事が分かった。 そして、彼は銀行の隣にあるマンションの屋上へ降り立った。 見ると、そのマンションの屋上には、銀行の様子を見る為か、多数の警察が双眼鏡を持ち、銀行へ視線を注いでいる。 その為か、そのマンションへ降り立ったクロウに気づく者は誰一人としていなかった。 光学迷彩機能はまだ持続しており、クロウが操作盤の時計を見ると、先程の時間から5分近く経過していた。 マンションの上には、5名ほどの警察がいた。 一人は無線機を片手に持ち、残りの四人は双眼鏡で銀行を観察している様だった。 クロウは、警察たちの後ろから銀行を眺めた。 彼の立つマンションも、それなりに高い方だったが、これから侵入しようとする銀行はそのマンションの1.5倍はありそうな高さだった。 そのガラス張りの壁は全て真っ暗で、ここからでは内部の様子は分からなかった。 「さて、どうするか…」 下を見れば、ずらりと多数のパトカーや装甲車が銀行を取り囲み、装甲車の上部に設けられた照明が銀行を照らし出している。 クロウは、警察の方を見た。 銀行に面した柵の前で4人の制服警官が監視をし、その指揮官らしきコートを着た刑事が下の警察と無線で連絡を取っているところの様だった。 「これでは本末転倒だが…仕方ないか」 クロウは、刑事が連絡を終えて無線機をしまうと、彼の目の前で光学迷彩を解除した。 「!!…何者だ!」 流石に刑事もクロウの姿には気づいたようで、すぐに腰の拳銃に手を掛けた。 だが、そこで終わりだった。 彼の腹にクロウの拳が当たった為である。 「がはっ…」 「悪いな、少し眠っていてくれ」 この騒ぎに、銀行の方を見張っていた4人の警官もクロウの存在に気づいた。 だがその時には、クロウは警官たちの近くまで接近していた。 一人は拳銃を取り出そうとしたが、先程の刑事と同じ様に腹にパンチを入れられ、卒倒した。 もう一人はそれを見て、銃を取り出す暇がないと判断したのか、警棒を手に殴りかかった。 だがその手を捻り上げられ、そのまま背負い投げを喰らう事となった。 背負い投げを喰らった警官はもう一人の警官に当たり、そのまま二人とも気絶した。 最後の一人は、瞬く間に全員が倒されたの見て、戦慄したような顔でクロウを見た。 だが、その3人がやられた時間の間に、拳銃を取り出し、照準を合わせることは可能だったらしい。 「う…動くな!」 「……」 クロウは警官を一瞬見てから、銀行を眺めた。 銀行の様子は、先程と何も変わっていない。ただ、警察側はスピーカーで何事か犯人側に呼びかけている。 「う、動くなよ…」 警官は、銃を向けながら、クロウに近寄っていった。 そして、倒れている刑事の無線機に手を伸ばしたが、その瞬間、銃はクロウの足に叩き落されていた。 驚く間も無く、その警官はクロウの蹴りで気絶した。 銀行の方は、今だ不気味な沈黙を続けている。 警察側がうるさいだけに、それが際立っていた。 クロウは、バックパックから2枚の円盤を取り出した。 半径20センチほどの薄い円盤で、クロウのアーマーと同じ紺色をしている。 「全く…癪に障るが、仕方ないな」 そう言いながら、クロウは銀行の窓を見つめた。 (直線距離にして約30メートルはあるな。ギリギリか…。) クロウは、2枚の円盤を両足に装着すると、左手首のアーマーを開いた。 そして、光学迷彩を再び起動した。 すると、両足の円盤もクロウのアーマーと共に透明に変化していく。 光学迷彩が機能したことを確認したクロウは、また操作盤で何事か入力した。 すると、両足の円盤が、徐々に地面から浮き始めた。 (反重力ディスク…久しぶりに使ったが、ちゃんと機能している様だな。) そう思いつつ、またノアの発明に頼った自分をクロウは反省した。 柵を蹴り、クロウは跳び上がった。 反重力ディスクのおかげで、落下する事無く、クロウは滑る様に銀行へ向かって行く。 地上から約40メートルもの高さを滑るクロウ。落下すれば、いくら粛清官の彼と言えど無事では済まないだろう。 下を見れば、銀行を取り囲む何人もの警察も、彼の姿には気づいていない。 クロウは、目の前の銀行の窓に視線を巡らせるが、どの窓にも人どころか、動くものの姿さえ見つける事はできなかった。 「(妙だな…犯人側に動きが無さ過ぎる…)」 何かを要求するでもなく、威嚇するでもなく、銀行強盗たちは多数の人質を取ったまま何もしてこないのを、クロウは不審に思った。 警察側も、自分達より強力な装備を持つ強盗達に手が出せないのだろう。先程から呼びかけはしているが、突入の準備はしていないようだった。 進みながら、クロウは背中のバックパックからナイフを取り出した。 このナイフは、ほとんど無音でガラスを切断する事が可能なものである。 ちなみに、これはノアの技術ではなく、クロウが自分で加工したものである。 銀行の窓まで辿りついたクロウは、手をついて反重力ディスクの勢いを消した。 そして、窓から内部を窺った。 内部は銀行内のオフィスの様で、多数のデスクやパソコンが見える。 だが、電気はついておらず、銀行強盗の姿も見られなかった。 クロウはそれを確認すると、ナイフを窓に突き立てた。 「(これも長い間使っていなかったが…まだ大丈夫の様だな)」 ナイフは易々と銀行のガラスを通り、たちまち人一人が通れるくらいの穴が開いた。 クロウは切断したガラスを持ち、銀行内部に侵入した。 銀行に侵入したクロウは、一つ失敗した事に気がついた。 高層ビルの窓に大穴を開けてしまったのだ。風が窓からオフィス内に吹き込み、いくつかのデスクの上にある書類が散乱してしまった。 「(…仕方ないか)」 クロウはナイフと両足の反重力ディスクをバックパックにしまうと、歩き出した。 オフィスから廊下に出たクロウだが、辺りは静まり返っていた。 「(確かこの銀行は20階建てだったな…)」 オフィスから出てしばらく歩くと、クロウはエレベーターを見つけた。 だが、それは作動していない様である。 また、エレベーターの近くには案内板が設置されており、それを見ると、現在彼は自分が12階にいる事が分かった。 「(下に行くには階段を探すしかない…か)」 仕方なく、クロウは再びフロアを歩き出した。 フロアの片隅で、クロウは鍵の掛かったドアを発見した。 仕方なく鍵をこじ開けると、やっと彼は階段を見つけた。 ドアの先は階段の踊り場で、手すりの外側から下の階段の様子を見る事ができた。 「…!」 その時、階段を上る音が聞こえるのにクロウは気づいた。 下を見ると、電灯を前方に向け、誰かが階段を上がってくるのが見える。 光学迷彩を起動している今のクロウは、肉眼では見る事はできない。 だが念の為、隅に移動した彼は、上がってくる者を観察した。 顔には覆面をし、手にはライフルを持った男。 その身体には黒い防弾チョッキを着て、ズボンのポケットには無線機が見えた。 十中八九間違い無く、銀行を襲った集団の一人であるとクロウは断定した。 その男はクロウの前を素通りすると、先程クロウがこじ開けたドアに注目した。 おそらく、その男は銀行内に侵入者が無いか見回りに来たのだろう。 「…これは!」 男は異常に気づき、無線機に手を掛けた。 だが次の瞬間、その首元にナイフの冷たい感触が当たるのを男は感じた。 「…動くな」 「…!?」 男の背後で、クロウはその首にナイフを突きつけていた。 「だ、誰だお前は!?」 「…静かにしろ。銃を捨てて両手を上げろ」 男は、静かに無線機をポケットに戻すと、言われた通りライフルを床に捨て、両手を上げた。 クロウは、男の耳元で、最小限の声量で言った。 「お前の知ってる事を話してもらおうか」 両手を頭の後ろで組んだ男は、静かに言った。 「け、警察の奴らか!?」 「…黙れ」 クロウは、ナイフを握る手に少し力を入れた。 男は小さく呻き声を上げ、それから黙り込んだ。 「…俺の質問にだけ答えろ」 クロウの言葉に、男はほんの少し頷いた。 「人質はどこにいる?」 「ち、ちち…地下1階の金庫室に閉じ込めてる。か、鍵はボスが持ってる」 思いのほか簡単に答えが得られたので、クロウは拍子抜けした。 だが、それと同時に面倒な事になりそうだとも思った。 「(どんな強盗団かと思ったが…思ったより普通だったな。 だが人質は金庫の中か…厄介だな)」 クロウは、先程から抱いていた疑問を口にした。 「…次の質問だ。今お前達は何をしている?警察にも無反応の様だが」 「………」 今度は、この男は答えなかった。 「どうしても…言えないか?」 しばらくして、男は答えた。 「…ああ。こればかりは死んでも無理だ」 「…そうか」 そう言うと、クロウはナイフを持つ手に更に力を加えた。 「…強情だな」 「ゲホッ…ゴホッ…言えないと言っただろ…殺したいなら早く殺せ…」 男はもはや立つ力も無くなったのか、階段の踊り場の隅で力無く座っていた。 クロウは、光学迷彩を解除し、男の前に立っている。 ちなみに、無線機も銃も、隙を見て彼が奪っていた。 「仕方が無い…何か言い残したい事はあるか」 クロウは左腰に差した刀を抜き、男に近づきながら言った。 男は力無く薄ら笑いながら、口を開いた。 「…いくらあんたでも『アレ』には敵わない。 名のある空族から横流ししてもらった代物だからな。 『アレ』には警察も手も足も出なかった…」 そう言って、男は黙り込んだ。 「…そうか」 静かにそう言うと、クロウは刀を手に男へ歩み寄る。 次の瞬間、衝撃と共に男の意識はブラックアウトした。 中編へ 月の中の男・目次